先に結論を言います。この夏、Amazon Primeビデオで配信された「THE BOY’S」は圧倒的におもしろい! 個人的にはAmazonでは『BOSCH/ボッシュ』以来の大ヒットだと思います。
この楽しさをたくさんに人と分かち合いたいので、あらすじと解説を後でご覧いただくのに邪魔にならないようにご紹介させていただきますね。
「THE BOY’S」ってどんなドラマ?
どうせ、いろんな能力をもったスーパーヒーローのチームが、宇宙から来た悪の軍団と戦う話でしょ? 私も最初そう思いました。でも全然違うんです。
舞台は現在のアメリカ・ニューヨーク。 現実と違うのは、我々普通の人間に混じって特殊能力をもった人間がけっこういて、中でもその能力の優れた者たちがスーパーヒーローとして、日々悪を退治し人々を助けて大活躍している、ということ。
ところが、このスーパーヒーローたちというのが、我々のイメージするスーパーヒーローとは大違い。なんと、ギャラを貰って働く雇われスーパーヒーローなのです。
『ヴォート・インターナショナル』という巨大企業は、200人を超えるスーパーヒーローを雇っている。 中でも最も優れた7人のスーパーヒーローたちを「セブン」と名付け、彼らを犯罪撲滅や人命救助で働かせてメディアに露出させ、その活躍で得た名声を利用して、映画製作やCM出演、グッズ販売、さらにはテーマパークまで作って、出演料や版権ビジネスで莫大な利益を得ていた。
と、ここまで書くと、荒唐無稽なSFコメディだと思うでしょう。
「なあんだ、タイバニと一緒じゃん」と思う通の人もいるでしょう。 確かに、日本のアニメ「TIGER&BUNNY」(タイガーアンドバニー:通称タイバニ)もヒーロービジネスが行われている世界のお話、ということで共通項はあります。
でも全然違います。
「タイバニ」は明るく楽しいコンビバトルもの。
「THE BOY’S」は…続きをお読みください。
このドラマでは、スーパーヒーローは、たまたま超能力を持って生まれた普通の人間として描かれています。食欲、性欲、金銭欲、名誉欲等普通にあります。
だから彼らは、大活躍をして高額なギャラをもらえるヴォート社に雇われることを望み、その中の最高峰「セブン」に選ばれることを夢見ているのです。
本来の素の部分をひた隠して人々の手本となるべく日夜スーパーヒーローとして働く、というのはかなりのストレスとなります。そんなところも出世を目指して忖度しまくるサラリーマンと何ら変わりありませんね。
そこで彼らはいろんな形でストレスを発散させます。スーパーヒーロー専用の“秘密の倶楽部”なんてのもあります。中には度が過ぎる者も。
一方『ヴォート社』の方も、スーパーヒーローの商品価値が下がらないようイメージ戦略に必死です。トラブルがあれば、ありとあらゆる手段を高じてスーパーヒーローを守ります。それがたとえ犯罪であったとしても…
企業化されたスーパーヒーローたちの腐敗した裏側。そんな大人の事情で隠蔽された不都合な真実があれば、当然その犠牲となるものが生まれます。
この物語では、はっきり言ってヒーローサイドはみんなクズなんです。
これは、スーパーヒーローの犠牲となった普通の人々が、腐敗したクズ・スーパーヒーローたちに対し復讐をしていく物語なのです。 驚きの設定ですね!
ではいったいどんなスーパーヒーローたちなんでしょう?
「THE BOY’S」に登場するスーパーヒーローはクズばかり!?
ホームランダー(HOMELANDER) 演:アントニー・スター
:「セブン」のリーダー。”スーパーマン風”ヒーロー。星条旗柄のマントを羽織って空を飛ぶ。 目から強力な破壊光線の赤色のレーザーを出す。亜鉛を除くあらゆるものを透視する能力、優れた聴覚能力、怪力、銃弾を弾き返す強靭な肉体を持っている。自信と友愛に満ちたその笑顔の裏には、出生も含めて恐るべき本性と謎があるようだ。
ディープ(THE DEEP) 演:チェイス・クロフォード
:優れた泳力を持ち、イルカや魚などの水棲生物と会話ができる。腹部にエラがあり、水中呼吸ができる。セクシーでモテ男だが、その実、新規加入のスターライトにとんでもないセクハラをするエロ男。
Aトレイン(A-TRAIN) 演:ジェシー・T・アッシャー
:マッハのスピードで走る高速移動能力を持つ。電車を丸々1台引っ張る怪力も持つ。ただしその力は謎の薬物の作用らしい。
トランスルーセント(TRANSLUCENT) 演:アレックス・ハッセル
:透明人間。皮膚を炭素系メタ物質に変化させて光を捻じ曲げているため、皮膚は異常に固く、刃物や銃も効かない。しょっちゅう透明になって女性トイレを覗く下品なクズ。
ブラック・ノワール(BLACK NOIR) 演:ネイサン・ミッチェル
: 全身真っ黒のコスチュームをまとい、全く喋らない謎の覆面ヒーロー。スーツには様々な武器が装備されている。
クイーン・メイヴ(QUEEN MAEVE) 演:ドミニク・マケリゴット
:アマゾネス風のコスチュームの”ワンダーウーマン風オトナの女”スーパーヒロイン。驚異的な身体能力と弾丸をも跳ね返す強靭な体を持っている。ホームランダーと過去に何かあったようだ。
スターライト(STAR LIGHT)/アニー・ジャニュアリー 演:エリン・モリアーティ
:「セブン」に新たに加入したばかりの”美少女型”スーパーヒロイン。見た目からは想像できない怪力で、電気を自在に操り、目から破壊光線を出す。憧れだったディープからセクハラを受け、ヴォート社の商業主義の真実を知り、既に幻滅している。
このように彼らは、表向きはスーパーヒーロー然として活躍してはいるものの、その本性は金と欲望で腐敗しきっているのでした。
それをとりまとめているのが、ヴォート・インターナショナル社の副社長・マデリン・スティルウェル(演:エリザベス・シュー)。
彼女は腐ったスーパーヒーローたちの粗相の後始末と隠蔽をしながら、彼らを鼓舞し、彼らの力を軍に売りつけ、ヴォート社の更なる売上増加と発展を画策しているのです。
そんな彼女に絶対服従のホームランダー。二人の間には謎の関係があるようです。 怪しい奴らですね。
ではどんなストーリーなのかちょっと見てみましょう。
「THE BOY’S」 第1話 ストーリー
ヴォート・インターナショナルは、スーパーヒーローを雇い、彼らの活躍と名声を利用して収益を上げる”ヒーロービジネス”を展開している。
中でも最も優れた7人が「セブン」と呼ばれ、人々から圧倒的な支持を得ていた。
電器店で働く平凡な青年・ヒューイは、ある日奇怪な現象に遭遇する。目の前にいた恋人のロビンが突然消えたのだ。
ヒューイはなぜか血まみれになっており、彼の手には握ったままのロビンの手が。
つまり、ロビンの体が目の前で爆発したかのように吹っ飛んだのである。
原因はAトレインだった。高速で走り抜けた際、誤ってロビンに激突したのだ。
ヴォート社はヒューイに弁護士を送り込み、不幸な事故なので慰謝料で解決しようと申し出る。その誠意の無さに怒り心頭のヒューイ。
そんな時、FBIのビリーという男に会う。ビリーはヒューイに、腐りきったスーパーヒーローどもに復讐させてやると言う。
右:ヒューイ(演:ジャック・クエイド)
左:ビリー (演:カール・アーバン)
ヒューイは断るが、ビリーはお構いなしに仲間を紹介していく。 その仲間というのが、ヤク中の犯罪者や更生施設の職員など。
彼らはかつて、スーパーヒーローの腐敗した真実を炙り出そうとFBIが極秘に作った「ザ・ボーイズ」というチームだったという。 だが、なんらかの事態が起きて分解してしまったらしい。
ビリーも今はもうFBIではない。にも関わらずおそるべき執念で「ザ・ボーイズ」を復活させようとしていた。
左から、ビリー、フレンチー (演:トマー・カポン)、マザーズミルク(演: ラズ・アロンソ)、ヒューイ。
後にキミコ (演:福原かれん)が加わる。
一方、ヴォート社では「セヴン」の新たなメンバー・スターライトのお披露目会見が行われていた。
本名はアニー・ジャニュアリー。田舎暮らしの子供の頃から母娘二人三脚で目指してきた「セブン」入りが実現して有頂天のアニー。
ところが、初めて入った「セブン」専用大会議室で、憧れだったヒーロー・ディープからひどいセクハラ(内容は詳しくは書けません)を受けてしまう。
アニーは、セブン担当のヴォート副社長・マデリンに直訴するが「セブン」の商業主義的価値を盾に言いくるめられただけ。「セブン」の裏の顔を知ってすっかり幻滅してしまうアニー。
落ち込んで海を眺めている時、ヒューイと出会う。二人はお互いに自分の正体や抱える事情を明かさないまま、なんとなく付き合い始める。
更なる経営拡大を目指すヴォート社のマデリンは、ヒーローを各国の紛争処理に使うことを提案し、軍との契約を画策する。
しかし軍需産業と繋がる議員に妨害される。苦境に追い込まれるマデリン。
ところがある夜、その議員の乗った旅客機が墜落してしまう。
海に沈んだその機体を見たディープは、そこにレーザー光線の痕跡を見つけ、ホームランダーの仕業だと気づく。
マデリンに報告するが、彼女はその事実を隠蔽する。 実は、マデリンを密かに愛するホームランダーが、マデリンの苦境を救うために勝手にやったのだった。
そんな時、ザ・ボーイズは「セブン」の一人・透明人間トランスルーセントを拉致することに成功。監禁してスーパーヒーローの秘密をいろいろ聞き出そうとするが、能力を持たない人間を馬鹿にしきっている彼は相手にしない。
ジミーは、ヴォート社への見せしめにトランスルーセント殺害を提案。しかし彼の肌はダイヤモンドより硬いので、どんな武器も役に立たない。
ようやく唯一攻撃できる部分を発見したジミーたち。殺害に反対するヒューイ。
ところが、トランスルーセントを探しに来たヴォート社の手の者たちによって包囲されるボーイズ。一気に殲滅させられるのか?
その時、ヒューイはとんでもない行動をとるのだった…!
と、ここまでにしておきましょう。全部話してしまうとこれから見ようという方に申し訳ないですからね。
「THE BOY’S」ストーリー展開・感想と期待値
ここまでの説明では、グロテスクで下品なドラマと思われてしまうかもしれません。
確かにグロい描写や非人間的な展開もあります。
でも、そういった描きは回を追う毎になくなっていきます。
一方で、ジミーがスーパーヒーローへの復讐に執念を燃やす理由や、スーパーヒーローが生まれた理由、ホームランダーの抱える闇などが少しずつ明らかになっていきます。
それにつれて、人間の暗黒面と善の面の葛藤をつぶさに描く、驚くほどハードな人間ドラマになっていくんです。 展開に甘さがない。そこまで行くのか、というくらい、徹底的に登場人物を追い込んでいきます。
この特異な設定は、人間をここまで描くためにあったのか、と納得させられてしまいます。
人間を極限状態にまで追い込んで生まれる人間ドラマを描く方法論は、アメリカのお家芸・ゾンビものの方法論と似ているかもしまれません。
つまり、最初の”おちゃらけお下品ヒーローもの”というイメージとは全く異なるドラマだということです。
どうです、見たくなってきたでしょう?オススメです。 途中まで見た人は、もう少し我慢して見続けてみてください。確実におもしろくなりますから。
せっかくですのでティザー(予告編)を入れておきますね。
興味を持っていただけると嬉しいです。
「THE BOY’S」キャスト情報
主人公のヒューイは、ジャック・クエイド。繊細な芝居をするいい役者だなと思っていたら、なんとデニス・クエイドとメグ・ライアンの息子さんだったんですね。「ハンガー・ゲーム」にも出ています。
その他、ビリー役のカール・アーバン(「スター・トレック」シリーズ他)と、マデリン役のエリザベス・シュー(「リービング・ラスベガス」他)ヒューイのお父さん役にサイモン・ペグ(「ミッション・インポッシブル」シリーズ他)と、メジャー級のキャストはもちろん他のキャストも、それぞれ見事にハマっていて気持ちいい。 シーズン2で再び彼らに会えるのが楽しみです。
【ザ・ボーイズ】
ウィリアム・”ビリー”・ブッチャー – カール・アーバン
ヒューイ・キャンベル – ジャック・クエイド
フレンチー – トマー・カポン
マザーズミルク – ラズ・アロンソ
キミコ – 福原かれん
【セブン】
ホームランダー(HOMELANDER) – アントニー・スター
ディープ(THE DEEP) – チェイス・クロフォード
Aトレイン(A-TRAIN) – ジェシー・T・アッシャー
トランスルーセント(TRANSLUCENT) – アレックス・ハッセル
ブラック・ノワール(BLACK NOIR) – ネイサン・ミッチェル
クイーン・メイヴ(QUEEN MAEVE) – ドミニク・マケリゴット
スターライト(STAR LIGHT) – エリン・モリアーティ
マデリン・スティルウエル – エリザベス・シュー
「THE BOY’S」シーズン2はどうなる?
2019年7月26日にAmazonビデオでシーズン1が配信されましたが、Amazonは、シーズン1の配信前にシーズン2の製作を発表しました。 期待値の高さの表れですね。
2019年12月には、ビリー役のカール・アーバンがシーズン2の撮影終了をツイートしました。
2020年には配信されるということです。
新たなヒーローも登場しますよ。
ストームフロント(Storm Front) 演:アヤ・キャッシュ
演じるアヤ・キャッシュによると、「ストームフロントは”セブン”に投げ込まれた核爆弾のようなもの」だそうです。ヴォート社を撹乱し、ストーリーをますますややこしくしていきそうですね。
そして、お待ちかねのティザー(予告編)がAmazon Primeで公開されました!
いやー、相変わらずグロテスクですねえ。ますます期待値が高まります。
というわけで、「THE BOY’S」お楽しみいただけると嬉しいです。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました!