ゴジラ~新作映画「ゴジラ キングオブモンスターズ」が出たこの機会に、日本が生んだ世界的スター元祖ゴジラのおさらいをしよう!

ゴジラ~日本が生んだ世界的スター

新作映画「ゴジラ~キングオブモンスターズ」のブルーレイ&DVDが発売されました。
これは「ハリウッド版ゴジラ」の第二弾ですね。
「モスラ」と、ゴジラの宿敵・最強の宇宙怪獣「キングギドラ」という東宝大怪獣が、ゴジラに続いて海を渡り、初めてハリウッド版に登場するということで話題の作品です。
監督のマイケル・ドハティさんは、物心ついた頃からの怪獣映画ファンで、『ゴジラ』シリーズはすべて観ているという、ハリウッドきっての“ゴジラオタク”。そんな監督が作ったんですから期待値は高まりますね。

というわけで、ここで改めてわれらが日本版「元祖・ゴジラ」を復習してみましょう。
今回は、昭和ゴジラシリーズ第5作「三大怪獣 地球最大の決戦 」を取り上げます。「キングギドラ」が、地球に初登場した記念すべき回です。つまり、最新作の原点でもあるわけです。

昭和ゴジラシリーズ第5作「 三大怪獣 地球最大の決戦 」

「三大怪獣 地球最大の決戦」基本データ

公開:1964年(昭和39年) 動員:541万人 配収:3.9億円

脚本:関沢新一 監督:本多猪四郎 特技監督:円谷英二 音楽:伊福部昭

ゲスト怪獣: キングギドラ ラドン モスラ(幼虫)

出演者:夏木陽介 星由里子 若林映子 小泉博 ザ・ピーナッツ 志村喬

「ゴジラ」シリーズ最大の敵「キングギドラ」が初登場した作品です。タイトルの「三大怪獣」というのは、地球の三大怪獣である「ゴジラ」・「ラドン」・「モスラ」のことで、宇宙怪獣であるキングギドラのことは含まれていません。あのタイトルは、”地球生まれの怪獣が力を合わせて宇宙怪獣と戦うぞ”、という意味なんですね。実際に、この三大怪獣は全く種族が違う(爬虫類と鳥類と昆虫?)にもかかわらず、鳴き声なのかテレパシーなのか詳細は不明ですが、明らかに意思疎通ができています。声を掛け合って力を合わせ、キングギドラと戦ったんです。これはすごいことです。

余談ですが、怪獣たちの最終決戦の場は前々作「キングコング対ゴジラ」でも採用された富士山麓です。これは、「キングコング対ゴジラ」同様、海外輸出を意識したものと思われます。富士山は当時から、海外でもとても受けの良いロケーションでしたからね。というわけで、クライマックスを富士山の麓にする手法は、「怪獣大戦争」や「怪獣総進撃」など、後年のシリーズにも”御約束”として脈々と受け継がれてい ったのでした。

「ゴジラ」の宿敵「キングギドラ」とは?

この非常に特徴的なデザインは、日本神話を描いた特撮映画『日本誕生』(東宝・1959年〈昭和34年〉)に登場する八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の造形がイメージ元となっている、という考え方が定番でした。
確かにあの顔は日本で昔から描かれてきた竜の顔ですよね。

ところが、1956年にソビエト連邦で制作され、1959年3月に新東宝配給で日本公開された『豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服』(原題:Илья Муромец : イリヤー・ムーロメツ)という映画があり、そこに登場する、火を噴く3頭龍がモデルではないか、という意見も出てきています。
この竜は、ロシアや東欧に伝承されている、「ズメイ」という名前の三つ首竜で、昔の文献に出てくる絵を見ると、「キングギドラ」によく似ているんです。
この作品の「ズメイ」は、日本に配給された際に「キング・ドラゴン」と紹介されたそうです。

また、ギリシャ神話に「ヒドラ」という怪物がでてきます。9つの頭を持つ怪蛇で、頭を一つ切るとそこから二つ出てくるというから恐ろしい。ヘラクレスに退治されたとのことです。ヘラクレスは強い。
この「ヒドラ」をロシア語で発音すると、なんと「ギドラ」(Гидра, ˈɡʲidrə) というんだそうです。

この「キング」と「ギドラ」が合わさって「キングギドラ」が生まれたのではないか、ということですね。なんだか本当っぽいですね。

現実的な側面では、この着ぐるみ、中に入っているスーツアクターは一人です。でも、3つの頭、2枚の翼、2本の尻尾がそれぞれ独立した動きをするため、ピアノ線で吊って操作したんだそうです。そういう操作をする人たちを「操演」と言うんですが、この作品でそのために要した人数はなんと25人。よくこんがらがりませんでしたね。

この作品の撮影当時、特技監督・円谷英二のお弟子さんだった川北紘一さんは、3つの首の動きが揃い過ぎないようにかなり苦労したそうです。
川北さんは「ゴジラvsキングギドラ」(1991年〈平成3年〉)では特技監督として、平成版「キングギドラ」と向き合うことになるんですね。

余談ですが、実はこの撮影を見学したことがあるんです。巨大な新宿副都心のセットに倒れ込んだキングギドラが立ち上がるカットを撮影するんですが、倒れたキングギドラは重くて自分では立ち上がれないので、引っ張り起こさなければなりません。そのためにキングギドラをロープで縛り、ステージ天井に吊った滑車にをひっかけてみんなで引っ張るんです。それでも大人数が必要で、たまたま居合わせた自分も手伝わされて、総勢20人ぐらいで引っ張りました。
でも一回目は川北監督から「NG」が出てしまいます。「立ち方に芸術性が無かった」と言われてしまいました。
そして二回目。今度は無事監督OKが出ました。たった数秒のカットにあれだけの時間と人間を使うなんて…映画作りにお金がかかるわけですね。

「三大怪獣 地球最大の決戦」はどんなストーリー?

舞台は異常気象に見舞われた日本。現代に通じるものがありますね。
ある日、巨大な隕石が黒部ダム付近へ落下します。

そのころ、警視庁の進藤刑事(夏木陽介)は、極秘で来日するセルジナ公国のサルノ王女の護衛を命じられます。ところが彼女を乗せたチャーター機は暗殺者の仕掛けた爆弾によって墜落してしまいます。

その後、「金星人」を名乗る謎の男装の女性(若林映子)が東京に現れて、ゴジラ来襲を予言し地球の危機を訴えます。進藤は、その女性が死亡したはずのサルノ王女だと確信し、単独で捜査を開始します。

その頃、テレビ出演のために日本を訪れていた小美人たち(ザ・ピーナッツ)は、予言を信じて帰国の船に乗ることを見合わせます。

進藤の妹の直子(星由里子)は、男装の女性を保護して横浜市内のホテルに隠れます。ところがそこに、サルノ王女の暗殺に失敗したことに気づいたセルジナの暗殺者たちが現れます。進藤も駆けつけますが、敵はプロの殺し屋。王女、あぶない!

ちょうどそこへ、ゴジラとラドンが現れます。ラドンは阿蘇山から、ゴジラ太平洋から出現して横浜で出会ってしまったのですね。早速二匹は意味もなく戦闘を開始します。怪獣ですからね。仲良くはしません。
進藤たちはこのどさくさにまぎれ、小美人たちの助けも借りて暗殺者たちの魔の手から逃れます。

進藤たちは、サルノ王女の精神疾患を疑い、彼女を富士山の麓にある精神医学の権威・塚本博士(志村喬)の研究所へ連れて行きます。
ところがなんと、診察の結果は正常と出てしまいます。これは一体どういうこと?
実は、サルノ王女には本当に「金星人」の血が流れていたのです。
遥かな昔、金星には高度に発達した文明があり、それが滅亡の時期を迎えた時、地球へ逃れてきた金星人の末裔だったのです。そのことが彼女に予知能力を発揮させていたのです。
王女は、かつて金星を滅ぼしたのは宇宙最強の怪獣・キングギドラだと言います。そして奴が地球に姿を現すと予言します。

その言葉通り、黒部ダムの隕石からキングギドラが出現します。

キングギドラは日本中を暴れ回ります。これに対抗するため、小美人はインファント島から守護神モスラを呼びます。人類の味方・モスラはなんと、ゴジラとラドンに呼びかけます。力を合わせてキングギドラと戦おう、と。さすが神様です。
ゴジラとラドンは、モスラが何を言ってるのかわかりません。そりゃそうでしょう、彼らはただの怪獣なんですから。仕方なくモスラは、キングギドラに単身戦いを挑みます。ところがなんと、その姿に心を動かされたゴジラとラドンは、モスラに加勢してキングギドラと戦うのです。怪獣に心が宿った奇跡の瞬間です。

こうして三大怪獣の猛攻を受けたキングギドラは、ついに空の彼方へ逃げ去ります。死なないところが続編を意識している証拠ですね。
暗殺者たちはキングギドラが起こした落石によって全滅し、サルノ王女も無事記憶を取り戻します。

すべてが終わり、サルノ王女は進藤に抱いた淡い恋心を明かすと、静かにセルジナへの帰国の途に就きます。このあたりは名作『ローマの休日』を真似ていますね。
モスラと小美人もインファント島への帰途に就き、ゴジラとラドンは、海を渡るその姿を岸壁から見送るのでした。
怪獣が見送るんですよ。
事ここに至って”怪獣の擬人化”が完遂されてしまいましたね。

つまり、ゴジラはこれまでの様な「人類の脅威」ではなくなってしまったわけです。

これは、ゴジラが初めて善玉として描かれた作品です。
善玉vs悪玉の構図を作り、善玉に感情移入させようと擬人化してしまったら、その後の展開は自ずと決まってしまいますね。
以降のゴジラシリーズは、”怪獣プロレス”となっていく運命を辿っていくのです。

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