月9ドラマ「シャーロック」はどんなドラマ?解説と感想

「シャーロック」と聞けば、イギリスの推理作家アーサー・コナン・ドイルが、19世紀末に生み出した、世界で最も有名な名探偵「シャーロック・ホームズ」を思い浮かべる人が多いでしょう。 では、月9版「シャーロック」とはどんなドラマなのか? その前に本家「シャーロック・ホームズ」をおさらいしておきましょう。

「シャーロック・ホームズ」ドラマ化のおさらい

19世紀後半、イギリスで「ストランド・マガジン」に連載されたコナン・ドイル作の「シャーロック・ホームズ」シリーズは、推理小説の一つの頂点とも言われて今日に至るまで世界中で読み継がれ、「聖書に次ぐベストセラー」と評されています。

これを原作として、19世紀の発表当時から世界中でたくさんの映画や舞台が作られました。
20世紀、世界的に有名になったのは、イギリスのグラナダテレビでジェレミー・ブレットがホームズを演じた「シャーロック・ホームズ」シリーズ(1984年~1994年)ですが、これは原作を忠実に19世紀を舞台にしたドラマとして映像化されたものです。
近年では、イギリスのBBCが舞台を現代に置き換えて、ベネディクト・カンバーバッチ主演で制作した「SHERLOCK(シャーロック)」(2010年~)が、オリジナルストーリーとスリリングでスピーディな展開で話題になりました。

月9版「シャーロック」はどんなドラマ?

「シャーロック」というタイトルから、大人気となったイギリスのドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」のリメイクかと思った人も多かったようですが、全く別の作品です。

ただ、警察の捜査をサポートする名探偵と医者のコンビ、という設定は原作通り。
“天才的な頭脳を持ち非常な物知りだが、人間的にはちょっと破綻している”というキャラクターも、シャーロック・ホームズを踏襲しています。
まあ、コナン・ドイルがホームズ用に発明したこういうキャラクターは、今や”名探偵”の代名詞となっているものなので、”名探偵”=ホームズ的になるのは仕方のないことでしょう。

舞台は現代の東京。 主役のシャーロックに相当する名探偵は、頭脳明晰で容姿端麗、謎解きが生きがいのフリーランスの犯罪捜査専門コンサルタント「誉獅子雄(ほまれ ししお)」。演じるのはディーン・フジオカさんです。
その相棒であるワトソンに相当するのは、精神科医「若宮潤一(わかみや じゅんいち)」。岩田剛典さんが演じます。
獅子雄に難事件の捜査協力を依頼するのは警視庁捜査一課の警部・江藤礼二(佐々木蔵之介)。原作のスコットランドヤード(ロンドン警視庁)のレストレイド警部に相当するキャラクターも登場します。 ディーン・フジオカさんの頭脳明晰でクールなキャラクターははまりそうですね。どんなお話なんでしょう?

月9ドラマ「シャーロック」第一話さわり

都内のある病院で、一人の勤務医が屋上から謎の転落死を遂げる。亡くなったのは、消化器内科医の赤羽栄光(中尾明慶)。
現場に駆け付けた警視庁捜査一課・江藤礼二警部は、病院関係者を集めて事情聴取を始める。
第一発見者の看護師・水野麻里(松井玲奈)が赤羽の助けを求める声を聞いていたことで、何者かに突き落とされた可能性が出てきた。 通報したのは警備員の石井太(木下ほうか)。彼も赤羽の声を聴いて現場に駆け付けたと話す。

すると、突然白衣を着た男が「嘘つけ!」と遮る。 男は麻里と石井の証言の矛盾点を次々と指摘し、論破してしまう。唖然となる周囲。
この男が誉獅子雄。白衣を着て医者に紛れて関係者の証言に聞き耳を立てていたのだった。
獅子雄はその時、視界の隅に一人の男を捉える。 遠巻きに様子を伺っていたのは、精神科医の若宮潤一。 その不審な動きに、獅子雄は若宮をマークする。

防犯カメラには逃げ回る赤羽の姿は映っているものの、追いかける者の姿は一切映っていない。見事にカメラの死角を利用しているようだ。
検視の結果、赤羽の死は腹部大動脈破裂によるショック死。防御創は無かった。 胃にはパセリとバターのみ。この組み合わせに興味を持つ獅子雄。

赤羽の自宅を訪ねると妻・汀子(松本まりか)が夫の死に泣き崩れていた。
舅と姑が訪ねて来ていて、そんな汀子をよそに孫娘を引き取って育てると提案。 汀子によれば、コンパニオンだった自分は嫁として認められていないのだと言う。

赤羽殺しの動機を探るため、獅子雄と江藤は赤羽の過去を調べることに。 すると、赤羽と若宮は大学時代同じサークルだったこと、そして、汀子ともそのころ知り合っていたことがわかる。そしてなんと若宮は、つい最近まで汀子を誘っていたというのだ。

どろどろした人間関係が少しずつ明るみに出てきましたね。 はたして若宮と言う男は何者なのか? そして姿無き殺人者の正体は一体者なのか? これ以上話すと完全ネタバレになってしまうので、ここでやめますね。

月9ドラマ「シャーロック」解説・感想と視聴率

このあと、獅子の活躍によって、おぞましい真実が明らかになっていきます。
それにしても、素晴らしいのは井上由美子さんの脚本。さすがベテランです。
ドラマ初回にありがちな人物紹介などすっ飛ばしてどんどん事件に入っていく。これは、登場人物が何者かわからないため結果的に視聴者をひっぱっていく大きな要素になるんです。
その上で、ストーリーの展開の中で登場人物たちのキャラクターをわからせていく。この手法は見事です。

ストーリー展開も、二転三転させて全く先を読ませません。説明し過ぎない加減もとてもいい。 細かなアイデアも良いですね。バイオリンの使い方なんて秀逸です。
随所に散りばめられた謎と伏線をすべて回収して、主人公の名推理に仕立て上げていくテクニック。素晴らしいです。 若宮がその後獅子雄の相棒になるなんて、かけらも気付かせないですもん。ワトソンのことなんてすっかり忘れてましたよ。そうきたか!と思わず膝を打ってしまいましたよ。

そして最後に明らかになる真実の深さ。ここにドラマがあるんです。 にもかかわらず、ベタベタしないでさらっと流す。そのための主人公のキャラクターだったのかと思わせるくらい粋なクロージングです。

この井上脚本を、こちらもベテラン西谷弘監督が演出。特有の情緒的で派手な演出は相変わらず。時々この人事件に興味ないのかしらと心配になっちゃう場面もありました。
緻密に計算して構築された井上脚本に対して、過剰な西谷演出。 でも、この組合せが意外に良いかも。

そして獅子雄役のディーン・フジオカさん。 最初はその優しい声が天才的推理の開陳には向いてないかな、と思ったけれど、すぐに慣れました。 というより、ナチュラルでむしろ良い。
変人キャラからくる大きな動作も、普通は芝居がかった大げさな”俳優自己満足芝居”になるところが、このひとがやると嫌味なくナチュラルにはまる。これも見ていてとても気持ちが良い。 個人的にはとてもはまり役だと思います。

視聴率は、初回は好スタート。 二回目は、前枠のバレーボール中継で押しスタートになったためちょっと下がってしまいました。連続ドラマにとって時間をずらされるのは痛手なので仕方ないでしょう。
この主演、脚本、演出のトライアングルなら今後伸びていく可能性はあります。
ただ、これだけ魅力的なキャラクターだと、作り手はキャラクターの話中心に流されてしまいがちです。そうなるとコアなお客さんだけが残る形になってしまうので注意が必要です。

第1話(10月7日放送):12.8%
第2話(10月14日放送):9.3%
第3話(10月21日放送):9.9%
第4話(10月28日放送):10.6%
第5話(11月4日放送):9.3%
第6話(11月11日放送):8.3%
第7話(11月18日放送):9.9%
第8話(11月25日放送):8.9%
第9話(12月2日放送):9.9%
第10話(12月9日放送):8.8%
第11話(12月16日放送):9.9%

スポンサーリンク
336×280
336×280

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
336×280