今さら聞けない「視聴率って何?」わかりやすく詳しく解説します!(前編)

新型コロナウイルスを警戒して外出を控え、家にいる時間が長くなると、テレビを見る時間も増えますよね。
先日もビデオリサーチ社が、テレビの視聴量が昨年の同じ時期と比べて大きく上回っているとの調査結果を発表しました。特に顕著なのがニュース番組の視聴率の上昇。コロナウイルスの情報を得るためには、やはりテレビから、という傾向のようです。
まだまだテレビの影響力は健在のようですね。

日々の生活の中では、テレビ番組の内容はもちろんのこと、「○○テレビ、視聴率3冠!」、「今週の視聴率ベスト10」など、視聴率も話題になっています。

「視聴率が高いってことは、たくさんの人が見てるってことでしょ?」
確かにその通りです。
「視聴率が高いんだからいい番組なんでしょ?」
それはどうでしょう?
つまり大半の人が「視聴率ってなんとなくわかるんだけど、実はどういうものかよく知らない」というのが現状だと思います。

というわけで、今回はこの「視聴率」についてお話ししてみますね。

視聴率って何?

視聴率というのは、簡単に言うと、ひとつの番組を、ある地区でテレビを持っている世帯(家庭)のうち、何パーセントが見たか?を表す数値です。

100軒の家でテレビがついていて、そのうち10軒の家がその番組を見ていたら、その番組の視聴率は10%というわけですね。

どうやって調べるかというと、視聴率を調べて分析する専門の会社があって、その会社がサンプル(調査対象)にしようと決めた家庭に、ある特殊な機械をとりつけるんです。
その機械は、昔は電話回線を通じて、今はネット回線で、テレビで今何の番組がついているかのデータが、瞬時にその会社に集約される仕組みになっているんです。

えー、そんな機械があったなんて知らなかった!
そんな機械がついてる家なんて聞いたことないわー。

そうでしょう。わかるはずがありません。なぜならその作業は極秘に行われるからなんです。

だって、どの家についているかがわかっちゃったら、テレビ局の人が大挙押し寄せて、「うちのチャンネルをつけてください。そうしてくれたら○○を差し上げちゃいますよ。ふっふっふ」っていう不正が行われてしまうじゃないですか。

冗談じゃないんです。実際にあったんですよ、そんな事件が。

日本テレビ視聴率買収事件

2003年のこと。「日本テレビ視聴率買収事件」として知られる、テレビ業界における大事件が起きたんです。

日本テレビのバラエティ番組のプロデューサーが起こしたその事件はこういうものでした。

彼はまず、探偵を雇って視聴率調査会社の車を尾行させて、調査対象の家庭をを割り出しました。そして、番組アンケートや機械の点検のふりをしてその家庭を訪ね、なんとお金を渡して自分の担当番組を見るようお願いしたんです。そのお金は、番組制作費を水増しして作ったものでした。

いやー、とんでもないことをしますね。
視聴率欲しさにそこまでやるか…と、当時も呆れられたものでした。

しかし、当時のテレビ界は視聴率競争が激しく、特に日本テレビは視聴率の獲得にこだわり、制作現場を煽っていたという背景があったため、追い詰められての犯行だったようです。
確かにやろうと思えばできるけど、ほんとにやるなんて…というのが、業界内での反応だったようです。
てことは、プロデューサーなら誰でも一度は考えてしまうことだということですよね。

それにしても、テレビ局はどうしてそこまで視聴率が欲しいの?
当然の疑問ですよね。もう少し詳しく見ていきましょう。

なぜ視聴率が必要なの?

そもそも、なぜ視聴率という数字が必要なんでしょう?誰が必要としているんでしょう?
どんな番組がたくさん見られているか、みんなが知るため?

ちがいます。
実は、これはその番組の中でCMを流すスポンサーと、テレビ局のためなんです。

例えば、ドラマの合間に自動車メーカーの新車のCMが流れたとしますよね。
あれは、自動車メーカーがテレビ局にお金を払って、そのドラマの中で自分のところで作ったCMを流す権利を買ったからできることなんです。この場合、その権利を買った自動車メーカーがドラマのスポンサーです。

テレビは全国民の家庭にあるので、そこでCMを流すことの影響力は絶大です。
なのでその権利(広告費)はかなりの金額です。
だから自動車メーカー(スポンサー)としては、たくさんの人に見てもらわなきゃならないですよね。新車を出したことをたくさんの人に知ってもらって、買ってもらいたいわけですから。払った分の広告効果を期待するのは当然です。

一方そのお金は、テレビ局にとって一番大きな収入源です。
テレビ局はそのお金で番組をつくり、局員の給料を払います。
テレビ局側も、もしこのドラマが失敗してあまりたくさんの人に見てもらえなかった場合、次のドラマは買ってもらえないかもしれません。つまり、売り上げにダイレクトに影響するんです。

というわけで、どれだけの人がその番組を見たかということが、スポンサーとテレビ局にとってとても重要なことだということがわかりましたね。

視聴率は、それを表す唯一の数字です。
だからテレビ局が視聴率獲得に必死になるのも当然なのです。

視聴率っていつからあるの?

テレビ放送が一足早く始まっていたアメリカでは、テレビの広告効果の大きさに各業界が早くから注目して、テレビ広告(CMのことです)を出すようになりました。そして彼らスポンサーは、広告費を効率よく投資するために、どれだけの人が番組を見ているかを知りたがるようになりました。
そこで、ニールセンという市場調査の会社が視聴率の調査を始めました。

日本でテレビ放送が始まったのは1953年。
日本にはそういった調査会社がなかったので、1962年(昭和37年)に、電機メーカーの東芝、広告代理店の電通、テレビ&ラジオの民間放送18社がお金を出し合って作ったんですね。それが「ビデオリサーチ」という会社です。


当初はニールセン社も視聴率調査に参入していたんですが、いろいろトラブルがあって撤退したので、現在はこのビデオリサーチ一社だけです。

視聴率ってどうやって測ってるの?

先ほども軽くお話ししましたが、今度はもっと詳しく説明しましょうね。

視聴率は、ビデオリサーチが調査対象として決めた家庭に対して、
①「ピープルメータシステム」
②「オンラインメータシステム」
③「日記式アンケート」
という3つの手法で調査しています。

①ピープルメータというのは、チャンネルセンサーがついていて「テレビの画面に表示されているチャンネル」を測定することと、「テレビを見ている人」がわかる機械です。
誰が見てるかまでわかっちゃうんだ!と思ったら、実はテレビを見ている人が、「今はあたしが見ているわよ」というボタンを押さなきゃいけないのでした。おそらく性別・年代別のボタンがついた特性リモコンがあるのではと推察されます。基本的に秘密の調査なので機械の詳しい情報がないんです。ごめんなさい。

②オンラインメータというのは、ピープルメータの旧バージョン。
チャンネルセンサーによってテレビの画面に表示されているチャンネルを測定するだけの機械です。

③日記式アンケートによる調査は、調査員が調査対象のお宅を訪問して、調査票を渡して記入してもらうものです。調べるのは、1週間毎の毎日のテレビの視聴状況です。5分刻みの記入欄もあるそうです。

これら三つの手法を組み合わせて様々な視聴データを集めています。
一般的に言われている視聴率は、チャンネルセンサーで測定した、「今何を見ているか?」の「世帯視聴率」のことです。

視聴率は地域別に調査しています。
関東(2,700万世帯)
関西(1,200万世帯)
名古屋(600万世帯)
北部九州&札幌(400万世帯)
その他地域(仙台、広島他200万世帯)

関東圏でサンプル(調査対象)になっている世帯は900世帯だそうです。
え?2,700万世帯(約4,300万人)の関東圏の視聴率を調べるのに、たったそれだけでいいの?と思われるでしょうが、統計学的にはそれで充分なんだそうです。

視聴率ハンドブックより

これら地域の中でも圧倒的に関東の人口が多いので、一般的に視聴率として取り上げられているのは関東の視聴率のことです。
まあ日本国民の総数が1億2600万人、関東だけで1/3もいるわけですから、関東の数字を見れば全国の視聴動向がわかるという考え方ですね。
スポンサーにとっても人口の多いところが市場が大きいわけですから、そのデータで事足りるということです。

また、1世帯にテレビが何台もある時代になってきたので、正確を期するために調査世帯のテレビにはすべてメータを設置しています。とはいえ1世帯8台までだそうですが。
まあそこまでテレビがあるお家もそうはないでしょうけどね。

調査対象の世帯は、毎月約40世帯ずつ交代し、2年間で全世帯が入れ替わります。
もちろん自分のところに測定機械がついていることを公言してはいけないことになっています。
このように徹底管理していたのに、例の事件が起きてしまったんですね。まあ、ビデオリサーチ社もあそこまでやる人がいるなんて想定外でしょうから、仕方のないことでしょう。

「視聴率とは何か?」なんと無くお分りいただけましたか?
後編ではさらに踏み込んで、視聴率を分析してみたり、視聴率のこれからの姿、など、”視聴率の裏側”を解説していきます。
知ってしまうとテレビの見方が変わってしまうかもですよー。お楽しみに!

後編に続く

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